ひらひらと

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zoom RSS 風のつよい夜に

<<   作成日時 : 2017/02/24 17:59   >>

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風がつよく吹きまくる夜に
木立の激しくゆれる音や電線のしなる音にまじって
たて付けのわるいわたしの家のあちこちから
ぎしぎしいう音が耳をうち

いっそ
屋根が飛んで柱が折れて壁が倒れて
床も裂けて
わたしはその渦中で
二階から墜落して

そのときは
お願いだから
スロ−モ−ションなんてやめて
走馬灯を回すのなんてやめて

わたしは瞬く間につぶれて




もうずっとずっと前になる
元日の朝
テレビで駅伝をみていて
スタ−トの合図があって
それに合わせてわたしはトイレにたった
用を済ませて
ドアをあけて廊下に降りようとして

不意に
なんにもなくなった
形も色も
騒音も
とうのわたし自身も

目覚めたら
わたしは廊下にうつ伏せに倒れていて
かたわらにメガネが投げだされていて
投げだした手の指がねじれて
なんとなく窮屈で
それでも動くのは億劫で
そのままで
かたまって

やがて
空いたドアから
テレビの駅伝の放送が聞こえてきた

『もう二区目に入っているんだ』

わたしは
無意識に喪失した時間を計っていた

つぎの走者へのバトンタッチの歓声がわき上がるころ

『さてもう起きあがろうか』

それも意欲があってではなくて
寒気に追いまくられたからではなくて
自然に
なるがままに
手を開いてねじれを解き
床に張りついた頬をはがし
顔を上げ
両手をついて立ち上がった

どこといって痛みはなくて
ただ
べたべたする頬に手を当てたら血がついていて
鏡で見ると
頬が縦に切れていた
跡が残らないように何度も何度も血をぬぐった

それでも
その数日後の
仲間との麻雀の席で
まだ消えない傷あとをしつっこく詮索されて
女にやられたひっかき傷かとか
からかわれて
わたしは
めんどうめんどうって眉間に皺を寄せながら
かいつまんで話したら
病院での受診をつよくすすめられて
つい
その気になって診てもらった

『原因はみあたりません』

一週間後にまた起こるか
あるいは十年後に起こるか
まったくわかりません

つまりはお手上げということで
たくさんの時間と高い診察料とをとられただけで
なんのことはなくて

でも今こうして振り返ると
あのとき確かに何分か意識をなくしたが

体の何かは
この不細工な体の何かは何かをした

じっさい指はねじれ
頬に傷はついた
それでも
トイレからあの狭い板の床までかなりの段差があって
片足を踏み出そうとして
意識は途切れたのだから

その途切れとともに
一気に転倒したなら
棚のある廊下の壁の鋭い切リ目をそれ
ガラス戸をかすめたにしても
打撲や捻挫や擦り傷が
もっともっとあっていいはずだったのに

ずっと
転倒の仕方がよかったと
偶然のたまものと決めつけていたが

違う
きっと何かが体をいたわり
損傷を最小限にくいとめるために
動いていた

意識を無くした何分間は
暗黒でも空無でも
時間の喪失でもなくて
体をとおして
ドラスチックでデリケ−トな迷走があったにちがいなかった




そういえばその数年前

職場での朝の打ち合わせのはじまるまぎわ
だれかの差し入れの餅菓子を
ひょいと口に放り込んだ

そしたら
のどに詰まって
んっ
鼻から息をしようとしてもできなくて
ああそうなんだ
口からできないことは鼻からもできないんだって
へんに納得して
ともかく
目立たないように席を立ち
給湯室にはいって
流しに顔を埋め

『吐き出そうかそれとも飲みこもうか』

二択を迫られて
迫られながら

このまま窒息死したら
みっともないだろうなとか
みんなに笑われてしまうだろうなとか

意識は
澄みきっていて
あきれるほど広々として
見晴らしがよくて
少しも遮るものなんてなくて

せく思いもないままに
それでも
このままではなんだからと
いちおう吐き出そうと決めて

口を大きく開けて
お腹や胸や喉や肩にも力をこめた
するとなんの前触れもなく
急に
のどの奥から
暴発した銃弾の
餅の塊りが
まっすぐに
流しの銀色のステンレスのうえに当たって潰れた

すると
騒音が戻ってきた
せわしない呼吸音が
窓の外の小鳥のさえずりが
すぐ隣の会議室の話し声が

ほっとして
苦笑しようとしたが
なぜか
涙がとめどなく流れてきて
当惑した

すこしも苦しくなかったのに
生還した感激があったわけでもないのに

でもゆらゆら戸惑いながらも
五感も六感も恥も外聞も
すべてつつんだ体の何かに
いま
わたしは泣かされているんだって
おぼろげながらに思い知らされた



わたしはわたしには違いない
けれども
わたしはわたしではない何かに
操られている
見えない糸に
上から下から斜めから
引っぱられたり緩められたりして
操られている

そうだとしても
わたしはわたしだ

投げやりになんてならなくていい

だからこそ
わたしは挟まれいたぶられ
墜落して
瓦礫の隙間で押し合いへし合いして
冷たい風をうけて

つぶれても

ゆっくりその経過をたどるがいい
走馬灯も回すがいい
あれもこれも
わたしを操って
こぜりあいを続けるがいい

わたしは寝返りをうつ

そのたびに妄想は色をなくし
飾りをなくし
枯れ木になる
風がその枝を折る
さらに折る
そしてついに
根こそぎ幹を倒し路地を滑らせる
その音につられて
電線がしなり
たがいに鞭打ちあって遠ざかる

風の強い夜に
わたしはまた寝返りをうつ

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ひらひらとさんおはようございます。
何時もお読みいただきありがとうございます。
何時もながら綺麗な文章を書かれますね。引き込まれるように読んでいます。
わたしはどうしてもダラダラとした文章で締まりのない独りよがりのチャラけたものになり直したいのですが直りません。糖尿病にはお互い気を付けましょうね、何か飲んで食べて糖尿病にならない方法がないかしら・・・・・?。
ありがとうございました。
ゆらり人
2017/02/26 09:24
コトバはひとをあらわしますよね。
わたしはゆらり人さんの文章が好きです。
どんなにおどけた文章でも(木彫りも含めて)、
優しさが感じられるから。
でも気にしないでください。
今まで通り、
思いつくまま書かれることを期待しています。

血糖値の高さには閉口しますよね。
バランスよくといわれますが、
今日のお昼は、
ビ−ルと激辛スタミナラ−メン!
「わかっちゃいるけどやめられない」です。
野菜をたくさんとること、
砂糖をあまりとらないことは、
心がけてはいますが・・・。
そういえば緑茶がいいようですね。
ただペットボトルでは、
ビタミンCのはいっていないものをとるようにしています(変なこだわり?)。

コメント、ありがとうございます。
ひらひらと
2017/02/26 12:59
おはようございます。
いいお天気になりましたが、冷えこんでいます。
花を育てる・・下手の横好きの部類でしょうね。
失敗も多々あります。
ドンマイ気分で育てています。
サルトルですか、名前は知っていますが〜
花について、どの様に書かれていたか、知りたくなりました。
いつか見つかりましたら、教えて頂ければ、嬉しいです。
食生活の大切さを実感しながら、時には無視をして〜
おいでいただきありがとうございました。
つむぎ
2017/03/03 09:46
つむぎ様

『ドンマイ気分』、
元気の出るコトバですね。

いつもいつも落ち込んでいて(?)、
わたしはちっとも溌溂としなくて、
恥ずかしい限りですが、
できるだけ『ドンマイ気分』を
自分に持たせてがんばっていこうと思います。

コメント、ありがとうございます。
ひらひらと
2017/03/03 12:58

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