ひらひらと

アクセスカウンタ

zoom RSS 曇天

<<   作成日時 : 2017/04/07 20:45   >>

ナイス ブログ気持玉 26 / トラックバック 0 / コメント 2

画像





桜の木の下のベンチにひとりすわっている
あのチビを眺めていると
よくわかる

もの音ひとつで
突きぬける風で
はらりと落ちてくる花びらで

びくつく

あのチビはちょっとだけ学校の成績がいい
それは自慢にはならない
むしろ恥だ

なぜなら
勉強はヤツにさせられたもので
頭をガンガンと殴られて

『おまえのためだ』と言われて

すすり泣きながら
取り組んだにすぎないのだから

殴られるのは辛い
チビはヤツの言いなりで
逆らうことなどできはしない

いつか
ヤツの機嫌をうかがうことがチビの習慣になっていた

お風呂で訊かれた
『太陽と月とどちらが好きだ?』

暗い心を反映して
『月』とこたえる

ヤツのゲ−ムにのる
図にはのらない

『向日葵とシロツメクサどちらが好きだ?』
『喜劇と悲劇どちらが好きだ?』

まだおとなになりきらない
感情をすぐ表にだすヤツに
お気に入りの答えを
口ごもる

それにしてもお風呂のなかでも
鳥肌が立つなんて

チビの頭はなでるまでもない
いつもコブはふたつはできていて
往復で

せめて伸びて尖って
ツノになってしまえ
泣きむし鬼になってしまえ
そうチビは自分をおとしめる

ある日
どんないきさつだったか
チビは新聞配達をはじめて
一週間もたたずにそれがばれて

『家の恥だ』とか
わけのわからないことを言われて
どやされて
殴られて
鼻血が出た

血を拭ういとまもなく
『首を出せ』と命じられて

ちょうど罪人が斬首されるときのように
正座して首筋を伸ばしてうつむいて
鼻から垂れる血よりも
膝においた両手の甲を眺めて

『なんて醜い手なんだろう』

もっときれいだったらよかったのに
あそびで負けてシッペされるとき
痛みには慣れてるけど
甲を見つめられるのがいやで
手を握って
顔を背けたものだった

でも
無理に不安を転化しようとしても
なんの慰めにもなりはしない

チビの首筋に激痛が走った

空手チョップが
庭で鋭い気合を入れて
敵に見立てた杭の荒縄をしならせる
その手を刃にして
チビをうちのめす

吸う息は嗚咽に重なって音高くなって
ヤツの癇にさわって
『男のくせに泣くな』といわれて
また殴られるから
吐く息ばかりにして
しゃくりあげないようにこらえて

それで
鼻血は止まったのだろうか

殴るヤツは知能の低い
ぼんくらで
軍国主義者の
上意下達の生ゴミで
いつか後悔させてやる
そんな気概があったならどんなにか救われたことだろう

恐れが
おののきが
憎しみや仕返しの気持ちを根絶やしにする
ただここから逃れたい
ひとりっきりになりたい
チビはそう願い続けるばかりだった

チビの時の翼は
ひ弱で
幼くて
遥かに飛びまわることはまだできなかった

それでも
いつまでも
チビはチビのままではなく
体だけは
チビではなくなるはずだ

翼だってしなやかになって
大空を羽ばたくことができるはずだ
時を自在に操ることができるはずだ

そして
飛び疲れて
瓦屋根に止まると
聞き覚えのある寸止めの気合が響いてくるはずだ

なんて暗い因果か

もうチビと呼ぶにはふさわしくはないが
町道場で空手をならうことにする

自分を守るためでも
やりかえすためでも
鬱憤ばらしをするためでもなく

チビだった時を踏襲し
そしてその時を打ち砕き
その瓦礫につばを吐き
解き放たれるため

だからって
チビの青春はすっきりするわけではなくて
相変わらずの
昼なお暗い
曇天つづきだ

よくわかる

桜の木の下でぼんやりしているチビよ

そのおどおどしたさまを眺めていると
ずっとずっと先までも透けて見えてくるのさ

だから
せめてひと声かけてあげよう

『がんばれ』

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 26
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた 驚いた
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
逃げ場のない悶々とした気持ちが重く圧し掛かって、それでもどこか対峙したい気持ちがよく出ていますね。
子供のころは私もそうですが親から説教と平手打ちがさく裂し「なんでやねん?」。どうにも出来ない気持ちを池に思いっきり石を投げつけ一時の気晴らし。
それで晴れる訳ではないけど・・・・。
やがて大きくなり対峙した相手は弱りチャンスはあれども労わりが先に立つ。いつかどこかに消えた反抗心やっぱり悶々とした気持ちは少なからずも顔を出す。
そんな感じなのでしょうか。
文才に疎いため、うまく読み取れず済みません、
トンチンカンなコメントかも知れませんが笑ってご容赦くださいね。
ふとそんな記憶が思い起こされました。何時も素敵なコメントありがとうざいます。
ゆらり人
2017/04/08 09:30
風に吹かれると、
前後も左右も散り散りになってしまうような、
こんな散文に、
コメントをいただいて、
かえってお手を煩わせたようで、
申し訳なく思っています。

10才にも満たない頃の記憶って、
一貫性はなくても、
ふいに鮮明に蘇ってくるものですよね。
それらが、今の自分を遠まきでも
規定していることは間違いなくて、
それでも歳が一回りも違う兄を恨む気持ちは
少しもありません。
おっしゃる通り、労りの気持ちこそが先に立ちます。

コメント、
ほんとうにありがとうございます。
ひらひらと
2017/04/08 12:57

コメントする help

ニックネーム
本 文
曇天 ひらひらと/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる