おまえはどこへ行ったのか わたしが後を追うあやかしの通りには おまえのグチや悔いだけではなく のどに滞ったままの呻きが苦痛をおびて 両側の壁にあたってこだまして わたしはいたたまれなくて うつむいていると 石畳から吹きあげてくる風に こだまはあおられてかすれ すこしだけ勇気をとりもどして顔を上げ…
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気まぐれな

ゴミを捨てて戻るとちゅう ネコに出会って ああ またおいらに恐れを感じて素早く逃げるんだろうな そう予期していたのに すぐ間近で おまえは歩みをゆるめ おいらを見上げ なにか訴えたげなようすはなく 『やあ』と ただ気まぐれな挨拶をしようとしていて おいらはすぐにそれに応えて 右手を…
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快適に

枯れ葉とともに マスクが落ちている ペットボトルが転がっている 軍手がへばりついている 車道の左端 側溝のちょっと傾斜した 外側線のはずれ そこは ノロノロ走る自転車に残された狭い通路 向かってくるノラ猫も さえぎる看板もなくて 空白でひと筋なのに ときに 頑として動きそうもない車が壁に…
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約束

『あした話したいことがあるの』 その声に わたしは小さい声でぼそりと 分かったとこたえながら そのあとにつながるはずのコトバを唇でかみしめます 窓の外からのぞく上弦から満月にふくらむ 悲しみと嘆きにみちた宵に 電車に乗って 人混みをかきわけて歩くわたしの姿を重ねれば わたしの明日はいかにも儚…
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さわやかに

だれも他人の苦痛を理解することはできない たまたま通りかかった美術館の迷路にさまよい 階段を上り下りし区切りから区切りへとめぐっていると いつか 抽象画の鋭利な断片がはねてきて わたしは 外側も内側も小刻みにえぐりとられ つい絶叫しそうになり それでも わたしの苦痛はカタルシスになってあなたを癒…
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悪友

なにがきっかけだったのか おまえと知り合ったのは 記憶にはない おまえははにかみやで ちょっと愁いをただよわせ そっぽを向いて目のまえの存在を消すだけでなく 不条理と不愉快なあしたまで切り捨てて 無機的な静かさをそえて 笑う おいらの笑いは生まれながらにこびりついていて 浅はかでおべんちゃ…
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ノラ

わたしは思わず二の足を踏んでしまいます よく見かける黒のノラネコが 道路の端できりっとすわって向こう側を見つめています 待ち構えているのです わたしにはわかりました ノラの気持ちが あるいはノラの肉体の汚点が 身にしみて ノラは じぶんの欲望を表現しても ぶざまで不透明でぶきっちょでい…
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青空が

黒い瞳は浮き沈みしている 憎しみの池で おいらは 泳げないわけではないが 臆病で とびこもうかどうか迷って 池は一定の深みから きゅうに冷たく凍り付いて 母さんが言っていた あなたは 冷たさに弱いんだから気をつけて 夏こそ 水の中ではすぐ唇が紫色になって アイスキャンディ…
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たかが夢

えっ 置きっぱなしにしていいの わたしは夢のなかにいるのです 家に向かう途中に立ち寄った店頭で足もとに置いたバッグを ぼんやり眺めて そのなかが透けて 小さな箱が見えて 箱の文様は手のひらに描かれたぬぐい切れない運命の軌跡になって やるせなくなって そっと蓋を開くと そのなかには    …
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でまかせの旅

でまかせの旅の果てで おまえは 暗い車の助手席にいて 酔いすぎてうなだれているのか 顔は見えなくて それでも苦虫を嚙みつぶしたような そっとわたしを上目づかいに覗いているような そんな気がして 飲み屋の若い運転手は 窓越しに手をふって わたしはわざわざ送ってくれたお礼のコトバを フロント…
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愛着から

あまりにも息苦しすぎて 家に帰って もう何度も洗って使ったマスクを捨て 捨てる手がちょっと止まる まだ使えば使えるのに もったいない もう在庫は少ないのに そんなことではなくて むしろ愛着から ごめんね むき出しの顔で出たら 見下した視線やおぞましい敵意にさらされてしまう そんなわ…
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見晴らし台から

林の細い坂道をすり抜けて 崖上のこじんまりした囲いのない見晴らし台に出て さあゆっくり休もうとほっとして まわりにだれもいなくて もっとほっとして 一枚板のベンチにすわり 大きなあくびをして ぼんやり眺める 下方には 木々の梢がひろがり その先に浜辺が 海水浴禁止のせいでひと気は少なく い…
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吠える

近所のイヌが吠えまくる 散歩ちゅうのイヌが通りかかったせいか 飼い主が 静かにしなさいとたしなめるが聞こうとはしない うるさい そんなに吠えまくらないで アイマスクをしているのでまぶたは暗いが 夜が白みはじめる少しまえに目覚めてしまい いまでは まわりはすっかり明るいはずだが 体は…
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森のなか

森のなかの 自然のまっただなかにわたしはいるのに 夕日に輝く木々や草花や虫けらは なにも語ってくれないのです かつて 木立はわたしによく話しかけてくれました 悪態をつかれ除けものにされたとき ひとり うなだれ森に入って 木の幹に両手をつき ドラマにあったように くやしさのあまり ひたい…
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梅雨を

路地であそぶ子どもたちの声がひびく 犬や猫の鳴き声よりも 小鳥のさえずりよりも 工事現場からはじける物音よりも わたしを逆なでして 苛つかせて 窓を閉じても 声は少しもさえぎれなくて なのに 風はさえぎって部屋の熱気がこもって 扇風機をまわして暑さをしのぎ さらに『まぶしい夏』で耳をふさぐ …
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灯台で

展望台で 歩き回りながら海と山と空を眺めて 遠く思いをはせて あれやこれやで胸をいっぱいにして まるで風船になって 満ちたりて 軽やかに ぴょんぴょんと急なはしごをおりて 踊り場に出て そこから螺旋階段をおります おりるにつれて しだいに 風船はしぼんで 閉所の抑圧にさいなまれ ひしゃげて…
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コンパの夜

私鉄の駅の近くの通りの地下口 おりきってドアを開けると すさまじい騒音が 有線放送から流れる歌とおしゃべりと グラスの擦れとシェーカーでふる氷のぶつかりと 靴音と衣擦れと わけの分からない軋みが波になって 寄せては返し 寄せては返す おいら 店内のドア近くの壁に沿った階段を上がり なにやら記…
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スポットライト

闇を切り裂くスポットライトはいくつもの視線を誤らせます これ見よがしの 誇らしげな大見得を浮き彫りにしながらも その存在そのものを薄っぺらにしているのです 広大な闇の中にこそ とらえ難くえ難いものがひそんでいて いかにも その姿をあらわすときを いまかいまかと待ち構えているのです わたしは隣のお…
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うたた寝

ちょっとだけうたた寝をしたばかりに 夢の川で舟をこぎながら 「黒の舟唄」の詩と旋律にのって 思いがけない別れの 対面した堤でのつまずきと 赤くそめた頬と 急ぎ足の 知った女の姿に戸惑いながら 調子っぱずれでも渋い いまに連なる ひとつの 結晶のきらめきで サングラスの奥の瞳にひびを入れて …
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目をそらし

行きかうヒトから つい目をそらしてしまいます 妄想であることは知っていながら きっと 言いなりになりそうもない 重苦しい動作に 眉間にしわを寄せて あわれむような眼差しに おしゃべりを拒む 耳を閉ざす仕草に そんなわたしに だれもが悪意を抱くと思ってしまうのです 白日のもとにさらしてし…
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