忘れもの

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忘れものを取りに戻った。
ところが、忘れたものは何だったのか、
それを忘れた。
時のフィルムをほんの少し巻き戻してみた。

自転車で大通りをとばしていた。
街路樹のポプラの梢を見上げた。
梢は水っぽい空を掃き清めようと、
かすかに風に揺らいでいた。
淡い光が粉雪になってゆっくり落ちてきて、
水晶体の海で漂った。
左手でハンドルを握り、
右手で目をこすった。
まぶたの裏に、
とつじょ金色の浮舟が現れた。
不安をみなぎらせたひとが、立つともなく座るともなく、
懐かしさのオ-ラとなって、
たゆとい、、
どんなに目を凝らそうと、
そのひとがだれなのか、見当もつかない。
もどかしくて、もういちど目を強くこすった。
そのとき衝撃をうけた。
前のめりになった体が勢いよく戻り、
地をけった足がすべった。
目の前に公園の石塀があった。

そうして向きを変えて引き返したのだった。
黒いベ-ルをまとった秘密はどこに潜んでいたのだろうか。
心の皮膜をやぶりその全貌をあらわそうと、、
忘れものはあちこち体当たりするのだが、
焦燥の響きだけがかすかに伝わってくるばかりだ。
まるで、すでに失ったものの抜け殻のように、
むなしく。

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