割れて
食事がすんでお椀やお皿を洗う
水を流したまま
泡を立ててスポンジで何度もこすってなめらかにして
それから素手で洗剤をおとす
手触りはすべすべではなく
むしろ滞りがちでつっかえるようになるまで
それから
布巾でふく
すべて拭き終わってから
重ねた食器を一枚一枚棚に戻す
その繰り返しの途中
手が
あるいは腕が
どう動いたのかさらさら覚えがないが
やっぱり
食器の始源は手のひらだから
手をくぼめたひょうしにか
一枚の長皿が落ちていく
焼き魚に使ったくすんだ青い花模様が斜めになって
裏返しになって
ざらざらの地肌をさらして
わたしの
腿から膝皿へ
さらに
膝皿から脛へ
さらりと
脛からくるぶし近くへ
手をさし伸べればまだとらえることができそうなほど
ゆっくり
こんな落下なら割れなくてすみそう
面倒な後片付けなどしなくてもすみそう
それほどにゆっくり
幼児の一日みたいに
ゆららさららと
なのに
くるぶしからは
いっきに加速して
床に激突する
鈍い音が響く
皿は割れて
とび散る
わたしは
はじめて瞬きをする
ため息をつく
皿が
木の葉や木片や平らな石だったらよかったのに
でも
同じ皿はまだある
つましい生活だけど
じゅうぶん使い古したものだから惜しくはない
皿の残骸を指でつまんで
透明なビニ-ル袋にいれる
粉々にはなっていないので掃除機をかけるほどではない
さいごに床を雑巾でふいて
ビニ-ル袋をとりあげる
ジャラジャラと音がする
わたしの思いがけない不手際で
いくつもの破片になって
わかれわかれになって
ふと
割れたのはわたし自身かもしれないって思いがよぎる
骨片どうしがこすれて鳴る悲痛な
乾いた音はかたく密封されて
なりをひそめ
こんなの
はやく捨てたいけど
この危険有害ごみは第三火曜日まで捨てることはできない
でも
それは待つまでもない
すぐやってくる
加速をつけて
はっと気づけばもう間近に迫っているにちがいない

この記事へのコメント
この間、トイレのドアが偶然弾かれ壁に掛かっていた時計のガラスが粉々に割れその時も「何してんねん!痛いやろ!」みたいな声がしたように感じましたよ。
偶然にも数日前に掛けたばかりだったのですが「なんでこんなところに掛けるねん」とでもクレームを付けたのでしょうか。
後始末も何となくわびしいですね。
ブログに戻ったらコメントが来ているのに、
スマホ、
メ-ルがエラ-になっていて、
一切表示されていません。
あれこれじっていたら、
かえっておかしくなって、
お店でみてもらおうと出かけてみたら、
今日は第二木曜でお休みとのこと。
自力でまたためしてみようかな!
ゆらり人さんの擬人化には優しさがありますね。
コメント自体が、ひとつの作品になっているように思えます。
ステキなコメント、ありがとうございます。
詳細な皿洗いの描写から、一転、割れたのはわたし自身かもしれないという変化がすごいなと。
ひらひらとさんの詩は、いつも変化球がものすごくて、読んでいてはっとさせられます。
これからも楽しみに、新しい詩をお待ちしています。
コメント、ありがとうございます。
なんかいつも、
アップしようとするたびに戸惑いがちになって、
『やっぱり削除しようかな』って
マウスがあちこち行き来します。
でも『まあいいや、日記のつもり』って無理やり納得させて、ゴ-!
ですから、
ほめていただいて、
嬉しいやら恥ずかしいやら・・・。
さあや様の詩は、もっとすてきですよ。
でも毎日・・・、
がんばりすぎないで、
『ときどき息抜きを』
提案。