水晶を
石灰岩の白い岩肌の
発破で崩れた
危うげな傾斜を
這うようにして
ゆっくり進み
指先で小石をはねのけ
水晶を探し
転校する友へ
手渡したくて
時を共有した記念に
心の傾きを変え
友と別れることの悲しさをかみしめ
それなのに
めまぐるしい日々の
向かい風や追い風にあおられ
立ちつくすこともできず
歩みをすすめ
そうして
別れが懐かしさに彩られるころ
またいつか
鉱山にむかい
這いずり
転げ
新たな友のために
水晶を探し
なんど同じことを繰り返せばいいのか
そんな思いにとらわれながらも
いつのまにか
手渡す対象をなくし
むしろわたしへの遺失物として
水晶に息をかけてシャツで磨いて
透き通る過去をみつめ
背後に沈みかけた太陽で顔を翳らせ
横たわったまま
大きく腕を振って
できるだけ遠くへ投げ捨てる
別離はできあがり
わたしの周りは根こそぎにされて
悲しみも愛しさも消えうせて
ささいな欲望さえ
しずまって
まして
まわりに
知人のひとりもいなくても
だれともことばを交わさなくても
穏やかなままで
口を閉ざし
目を伏せ
抵抗などせずに
あてもなくさまよい
いつか
そんな繰り返しの末に
別の自我に取りこまれて
再生して
なんとなく
ポケットを探ると
夕映えに投げたはずの
いくつにも光りの屈折した水晶が
指に触れて
まだここに残っていたなんて
その照りかえしに
ちょっと妙で
ちょっとおかしくて
ちょっと恥ずかしくて
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