空を

疲れきって わたしは歩道のベンチにすわりこみ空を見上げる なぜか首をかしげて わけなどないのに おまけに 涙にまみれてしまう 師走の寒さのせい かどわかされそうな恐れのせい 夢を持てない無力感のせい そんなことはない 悲しみすらないのに せめて 頭を膝のあいだに入れて 目をふさぎ…
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お見舞い

寒い朝 曇り空 長らく入院してて ようやく退院したカレのお見舞いに 訪問時刻は前もって告げていて 早すぎるほど早く家を出て 駅舎内のお店でお見舞いの品を なかなか決めることができなくて あれこれ思いあぐねて 店内をめぐりめぐって ようやく選び 時間がかかりすぎても なんとか…
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砂時計

わたしの時を測ります 陽光にかがやく この砂時計で さらさら砂が落ちます 下のバルブの砂山には影がさして わたしは瞬きをくりかえし じっと見れば 砂山は単調に流れながらも 壁や電線やベンチがあって そこにヒトが佇み歩み走り 泣いたり笑ったり いたわりあったり傷つけあったりして たま…
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まどろみ

階段を下りていく 深く 黒くそまって めまいさえ覚え そんなわたしの耳に響く せわしない吸う息 吐く息 足を止めたおどり場はいつか和室になって その押し入れの中で 物音を立てまいと身動きひとつせずに 恐怖をおし殺して ぼくのすぐそばには マムシの生きたままつかった酒瓶があり…
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ふらふらと

プールでひと泳ぎして 外に出て ふらふら 朝 出がけには寒かったので 厚目の上着をきこんできたけど いまは 体は火照って汗ばむほどで 上着を持ったまま長袖シャツ一枚で 駅まで坂道をくだり ふらふら 転ばないように ちょうどいまごろは 真冬なみに着こんだヒトや えっ寒くないのって驚い…
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白い月

雲ひとつない澄んだ青空 ちょっと寒いけど気持ちがいい たったひとつの空白 あれは下弦の月 じっと眺めていると 月でのたき火の煙がひろがって どんどん立ちこめて 青空を隠して 灰色いちめんにして やがて 霧雨が降ってくる ああ 雨が降ったら 自転車には乗れないからさ ちょっとがっかり…
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読書の秋に

久しぶりに小説を読む 文庫本で13冊の長編小説のなかの一冊 もう何度か読んだので 適当に第一篇のⅡをとりだして パラパラめくると ところどころに ページのうえ角に折り目があって はじめは165ページ つぎは177ページ まだある 196ページ 352ページ 379ページ 最後は4…
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泳ぐ

初心者用のレーンにはだれもいない ゆっくり平泳ぎをして 潜水し 水のなかは 底面と壁面の青色にそまって 外からの金色の光で 斜めのしま模様になっていくつも交叉して 静かで まるで周りは固体になりつつあって わたしは 顔をあげるのが厭わしくなってしまう しばらくすると 水底の黒い横筋がか…
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長い夜

先生が言う    いい    ベッドに入るのは眠るときだけ    早くからベッドに横になって    スマホやタブレットでゲームをしたりドラマをみたりするのはよくない    たぶん    中途覚醒の原因はそこにある    毎日5時間前後の睡眠しかとれていないと思ってるかもしれないが    あなた…
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うつろな夢

つま先立ちになって 蛍光灯を消そうとするが消えてくれない スイッチひもはゆらゆら揺れて見え隠れしているが 関心はなくて 下を見ると 蒲団が敷いてあって そこには女が横になっていて まっすぐ仰向けで真上をきっと見つめたまま せまい蒲団の半分をしめて わたしはその隣りに突っ立っている わたしは…
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倒れていて

スーパーの前で 女のひとが仰向けに倒れていて 店員さんが二人 かがんで付き添っている きっと 救急車をまっているのだろう わたしはその近くに立ち止まっていると やるせないめまいにおそわれ 倒れていて 起き上がろうともがくが それは幻想で めまいを待ち構えているばかりで むしろ腰を折って …
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男と女の時

テキーラのワンショットを一気にあおり 女は話す とりとめもなく 当たりまえのことは 無視し 省き 短く それでも長々と 男はいつも聞きいる 相づちをうったり 女の横顔に見いったり ときには首を傾げたりするが いつも両腕をおおきく広げて 静まりかえった湾にして 女をすっかり受けいれる…
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おまえはどこへ行ったのか わたしが後を追うあやかしの通りには おまえのグチや悔いだけではなく のどに滞ったままの呻きが苦痛をおびて 両側の壁にあたってこだまして わたしはいたたまれなくて うつむいていると 石畳から吹きあげてくる風に こだまはあおられてかすれ すこしだけ勇気をとりもどして顔を上げ…
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気まぐれな

ゴミを捨てて戻るとちゅう ネコに出会って ああ またおいらに恐れを感じて素早く逃げるんだろうな そう予期していたのに すぐ間近で おまえは歩みをゆるめ おいらを見上げ なにか訴えたげなようすはなく 『やあ』と ただ気まぐれな挨拶をしようとしていて おいらはすぐにそれに応えて 右手を…
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快適に

枯れ葉とともに マスクが落ちている ペットボトルが転がっている 軍手がへばりついている 車道の左端 側溝のちょっと傾斜した 外側線のはずれ そこは ノロノロ走る自転車に残された狭い通路 向かってくるノラ猫も さえぎる看板もなくて 空白でひと筋なのに ときに 頑として動きそうもない車が壁に…
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約束

『あした話したいことがあるの』 その声に わたしは小さい声でぼそりと 分かったとこたえながら そのあとにつながるはずのコトバを唇でかみしめます 窓の外からのぞく上弦から満月にふくらむ 悲しみと嘆きにみちた宵に 電車に乗って 人混みをかきわけて歩くわたしの姿を重ねれば わたしの明日はいかにも儚…
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さわやかに

だれも他人の苦痛を理解することはできない たまたま通りかかった美術館の迷路にさまよい 階段を上り下りし区切りから区切りへとめぐっていると いつか 抽象画の鋭利な断片がはねてきて わたしは 外側も内側も小刻みにえぐりとられ つい絶叫しそうになり それでも わたしの苦痛はカタルシスになってあなたを癒…
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悪友

なにがきっかけだったのか おまえと知り合ったのは 記憶にはない おまえははにかみやで ちょっと愁いをただよわせ そっぽを向いて目のまえの存在を消すだけでなく 不条理と不愉快なあしたまで切り捨てて 無機的な静かさをそえて 笑う おいらの笑いは生まれながらにこびりついていて 浅はかでおべんちゃ…
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ノラ

わたしは思わず二の足を踏んでしまいます よく見かける黒のノラネコが 道路の端できりっとすわって向こう側を見つめています 待ち構えているのです わたしにはわかりました ノラの気持ちが あるいはノラの肉体の汚点が 身にしみて ノラは じぶんの欲望を表現しても ぶざまで不透明でぶきっちょでい…
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青空が

黒い瞳は浮き沈みしている 憎しみの池で おいらは 泳げないわけではないが 臆病で とびこもうかどうか迷って 池は一定の深みから きゅうに冷たく凍り付いて 母さんが言っていた あなたは 冷たさに弱いんだから気をつけて 夏こそ 水の中ではすぐ唇が紫色になって アイスキャンディ…
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