涙目に

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目にごみが入って痛みます
指でまぶたをこすって
涙をためて

お願い
涙といっしょに流れていって

なんども瞬いて
涙をあふれさせて

ふと
見あげると

マンションの
青い壁にはさまれた一画が
雨戸が閉まっていて
日がさして金色に輝いて
ベランダの取っ手を曲線にして
あちこち途切れて断線にして
ちょうど雨だれにみまわれているみたいです

あの部屋は
いわくつきで
ずっとヒトを拒絶して空いていて
ひっそり闇に包まれているのでしょうか

それでも
闇は疼いて
どこかから
すきま風がぬき足さし足で忍び寄り
部屋のすみずみに埃を追いやって
ちいさな渦を巻いていると
なにやらラップ音が響いてきます

だれもが
思わず身震いしてしまうことでしょう

わたしは強い風にあおられて
一瞬だけ
そこに涙の目を向けているに過ぎません

あそこには
どんな物語が秘められているのでしょうか

いつだって
さまざまな概念が
雨戸を開けガラス窓を開け
パジャマのボタンを外し胸をさらし
口さえふるわせ
海からの風をうけて
時を握った手をさしのべ
なにもかも
光にさらしていたはずです

だから

だからといっても偶発的で
わたしはそこに
一瞬に
わたしの心を預けようとしているのです

あんな高さから
高所恐怖症のめまいに襲われて
ついでに
いっそ落下して
朽ちかけた実在だけを残して消えようかなどと
なげやりになったこともありましたから
いわば
物語は無限に広がっていくのです

わたしの素地はあからさまで
恥も外聞もなく
笑われようと
罵られようと
いっこうに気にならないのです

わたしは高みを目ざしながらも
足を踏み外したり
方向を見失ったり
洞窟でうたた寝したりして

目指す地点に立つことは決してできないことでしょう

それにしても
なんて風の強さかしら
洗濯物はしっかりくくりつけてきたはずだから
大丈夫だとは思うけど
蒲団が吹っ飛んだなんてことになったらおかしすぎて

いつか
一歩を踏みだすと
目に入ったごみが涙にまぎれてすっきり取れていて
わたしはホッとします

この記事へのコメント

ゆらり人
2019年04月01日 07:39
足を踏み外したり、方向を音痴になったりは死ぬまで付きまといますから嫌ですね。
 私なんかも何時も折れそうな枯れ枝の上を歩いているようなもので、強く踏ん張って歩けることは少ないですね、仕方なく渡っていますが、折れかけた枝を誰かが下から支えてくれたり、通り過ぎるた瞬間に折れて生き延びる見たいな人生ですよ。
素地もひらひらとさんと同じで、こうでなければ生きていけない様に思います。
結局は自分で怒ったり涙を流したりしながら、時が解決してくれることに期待しているようです。
中々、自然体でいるのは難しいですが、それなりで行きましょうか・・・・
よく伝わりましたよ。
2019年04月01日 12:48
『枯れ枝の上を歩く』
ゆらり人さんの比喩はさすがに年期が入っていて、
リアリテイがありますね。
脱帽!
ホントに自然体でいることは難しいですが、
わたしもゆらり人さん同様、
それなりで生きていきたいと思っています。

コメント、ありがとうございます。

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